とても懐かしい人の話。
先週乗せていただいていた大阪フィル×尾高先生のベートヴェンチクルス第1回のリハーサルで、尾高先生のお話の中にとても懐かしい方の話が出てきました。尾高先生が話された内容はここには書きませんが、誰の話が出たかと言うと... 田中千香士先生の話です。
千香士先生のことは、ふた月に一回くらいはふと思い出したりするのですが、誰かの口から千香士先生の名前が出てくるのはかなり久しぶりで、自分でふと思い出すのとは違う、もっとリアリティのある思い出し方をしました。
先生の飼っていた猫...モンタンと言う名前(Yves Montandからとったんだと思う)の、お腹が床につくくらい太っていたアメショはいつまで生きていたんだろう?とか、レッスン室の壁画のこととか、夏の暑い日にレッスンに行ったら、奥さまのあや先生がアイスクリームをくださったこととか、意外にもプリウスに乗って「エコ」を自慢されていた事などなど... 挙げたらキリがない(&ここに書くのは躊躇する話も...)くらい、山のように思い出があります。
よく、関西で仕事していると「誰門下?」という話になるのですが、私は関西で本格的なレッスンを受けたことがなく、一番最初にお世話になったプロフェッショナルな先生が田中千香士先生でした。中学生の時に進路に迷い、とりあえず有名な先生にアドバイスをもらおうと思い立ち、「音楽の友」か何かの雑誌で見つけた講習会に申し込んでレッスンを受けたのが始まりでした。
今でも鮮明に覚えている講習会... その時モーツァルトの3番しか弾けるものがなく、1楽章をカデンツァ付きで弾くのが精一杯、楽器のサイズはなぜか3/4で、中学1年生、ガチガチに緊張して思うように体が動かない... どう考えても、ヴァイオリンは趣味にして、勉強頑張れば?というレベルだと思うのですが、千香士先生その頃もう60代で退官間際だった事もあり、太平洋のような広い心で継続的にレッスンしてもらえることになりました。
プライベートレッスンでもガチガチの緊張はなかなか治らなかったですが、年上のお姉さんお兄さん方(芸大生か、受験生)のレッスンを聴かせてもらったり、パガニーニのカプリスを弾いている人間を初めて間近で見たり、N響の話しを聞いたり、フランスの講習会に連れて行ってもらったり... 本当にカルチャーショックの連続でした。
結局、2年の準備で藝高を受験する勇気はなく桐朋に行ったのですが(桐朋を選んで良かった気がします)、あの夏、千香士先生が無責任なレベルのポジティブさでヴァイオリン続けることを勧めてくださった事に、今更ながら深く感謝しています。